相撲部屋に入門した力士の修業生活と角界の厳しい現実を追う、国技SUMOを舞台にしたドキュメンタリー作品『辛抱』
今回のドキュメンタリー映画紹介は、相撲の世界に飛び込んだ若者が、厳しい相撲部屋の生活を通じて成長していく姿を描いだドキュメンタリー映画『辛抱』です。師匠と弟子、相撲界の上下関係やしきたり、角界ならではの独特な生活と文化、稽古に明け暮れる力士の修行の日々・・・。辛抱しながら厳しい相撲界で番付上位を目指します。本作は、単なるスポーツドキュメンタリーではなく、相撲の道を生きる人々の人生そのものを映した記録映画です。それでは作品紹介をさせていただきます。
<作品紹介>
ドキュメンタリー作品タイトル:辛抱
~大相撲の力士、角界で心技体を磨く。相撲部屋の稽古と師弟関係、しきたり、日々の生活と心情に迫る~
原題 | Une vie normale. Chronique d'un jeune sumo. |
制作年/作品時間 | 2009年製作/作品時間106分 |
撮影地 | 日本 |
製作国 | フランス |
監督 | ジル・クロン |
受賞歴 映画祭 |
2009年 アムステルダムドキュメンタリー国際映画際
2010年 Gdansk映画祭(ポーランド)
2010年 アドリードドキュメンタリー映画祭(スペイン)
2010年 フラハティアナ国際ドキュメンタリー映画祭(ロシア)
2010年 エスカルズドキュメンタリー映画祭(フランス)
2010年 教育映画祭 - エヴルー (フランス)
2013年 香港フランス映画祭(香港)
2014年 クレテイユ女性映画祭(フランス)
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「辛抱すればいつか花開く」という日本的な考え方に関心を持った監督が、相撲界(角界)で耐え忍ぶ若者の姿を追った。柔道部のエースだった大串拓也は、高校卒業後に大島部屋に入門。父親には「帰ってくる場所はないので覚悟してやれ」と送り出されていた。兄弟子たちとの共同生活、抗えない上下関係、同期入門のライバルたちとの体格差など、想像を超えた現実が彼に襲いかかる。「逃げ出したい」と思いながらも、父の言葉を思い返して辛抱し続けた。力士となり、初土俵から二場所目で6勝1敗の成績を残し、序二段まで昇進するもその後は伸び悩む。厳しい稽古が延々続き、次第にモチベーションを保てなくなった拓也は、姉や旧友に本音を晒す。彼の行く道に光は見えるのか。伝統社会に生きる若者の心情を描く。
[ドキュメンタリー作品・予告編]

本作品の見どころをお伝えする前に、相撲界に関して、力士の番付や収入、相撲部屋の実態や厳しい稽古生活に関して、簡単に解説いたします。
<解説!相撲界の制度、番付と収入の現実>
■相撲部屋への入門と新弟子検査■
大相撲の力士になるには、力士を志望する者が受検する検査「新弟子検査」を受ける必要があります。合格すると、日本相撲協会に登録され正式な力士として認められますが、検査を受けるためには入門したい相撲部屋の師匠となる親方経由で日本相撲協会に力士検査届と必要な書類を提出する必要があります。
現在、日本相撲協会に所属する力士の数は約600名(※2024年日本相撲協会公式発表より)。しかし、彼ら力士全員が同じような生活をしているわけではなく、「幕内力士」と「十両以上」といった上位の番付に上がることで、ようやく安定した給与が支払われるようになります。幕下以下の力士には給与がなく、部屋から支給される「手当て」や支援のみで生活を送る厳しい現実があります。
■力士の番付(階級制度)と収入の現実■
相撲界には番付と言われる厳格な階級制度が存在し、力士の地位、序列を表したものです。10段階で格付けされ、上から順に横綱、大関、関脇、小結、前頭、十両、幕下、三段目、序二段、序ノ口と分かれています。十両以上が関取とされています。同じ序列の力士も「東」と「西」や「何枚目」という表現で順番が決まっています。そして、力士の収入は、この番付によって大きく異なります。
関取以上が相撲界の一人前となっており、幕下以下の力士は、「力士養成員」であり、基本給がないため、金銭的な支援がなければ相撲を続けること自体が困難となります。このような構造の中で「横綱」を目指していく過程には、まさに辛抱と根性が求められるのです。
横綱 | 月額 約300万円以上 |
大関 | 月額 約250万円程度 |
十両以上(関取) | 月額 約100万円以上+賞与 |
幕下以下 | 基本給なし(一部手当のみ) |
関取以上が相撲界の一人前となっており、幕下以下の力士は、「力士養成員」であり、基本給がないため、金銭的な支援がなければ相撲を続けること自体が困難となります。このような構造の中で「横綱」を目指していく過程には、まさに辛抱と根性が求められるのです。
<解説!相撲部屋の実態と稽古生活>
■相撲部屋の実態と力士の生活■
力士は番付の階級制度があるため、番付に応じた給料や待遇の差が発生します。また相撲部屋には、独自の「しきたり」や「ルール」が根付いています。例えば、番付上位の力士から食事をするしきたりや夜の風呂掃除やちゃんこの支度、炊事を下位力士が担うなど、厳格な上下関係が存在します。
■相撲の稽古と修行■
相撲の稽古は想像以上に過酷で、毎日早朝から始まります。四股(しこ)やてっぽう、すり足といった基本動作から、激しい取り組みに至るまで、心身を鍛える修業はまさに「武道」そのものです。特に下位力士にとっては、稽古が自身の存在価値を示す唯一の場。体重管理や怪我との闘いも日常茶飯事です。このような日々の中で力士たちは、自身の相撲人生をかけて番付を駆け上がろうと奮闘します。勝てば番付が上がり、負ければ生活環境も待遇も変わる厳しい世界。そんな角界において、若者たちは己の限界と向き合い、相撲の厳しさや過酷な稽古と向き合いながら、自らの居場所を模索していきます。
<『辛抱』ドキュメンタリー作品のみどころ>
ドキュメンタリー映画『辛抱』は、日本の伝統競技「相撲」(SUMO)に身を捧げる若者たちの過酷な日常を追った作品です。舞台は、北海道・旭川から出てきた若者「大串拓也」が入門した大島部屋。相撲界のしきたりや文化、伝統が残る上下関係、厳しい稽古のなかで、夢を抱いて角界に飛び込んだ若者が「力士」として一人前になるまでの修行の日々が克明に描かれています。
彼らが過ごす相撲部屋の生活は、想像を超える厳しさに満ちています。朝の稽古から掃除、食事、そして番付に応じた力士の階級による扱いの違いまで、相撲業界のリアルな日常が赤裸々に映し出されていきます。高校卒業後、相撲未経験ながらも「横綱」を目指して師匠の元で修行を開始。相撲の稽古の厳しさ、番付による人生の変動など、直面する挫折と葛藤に苦しみながらも、力士同士の友情や支え合い、師匠の思いやりに満ちた言葉など、人間味溢れる瞬間も随所に描かれています。
「心技体」を柱とするこの武道の世界で、一人の青年がどのように成長していくのか。相撲の文化や相撲の歴史を感じながら、自分事のように感じられる作品です。



■こんな方におすすめ■
相撲映画として、力士の生活や内側から角界を描いた作品は貴重であるため、相撲や相撲業界に関心のある方や力士の生活や相撲部屋の実態を深く知りたい方はもちろんのこと、武道や師弟関係に興味がある方や、努力、夢を描いたドキュメンタリーが好きな方には、特におすすめです。
現在の日本において相撲人口は減少傾向にありますが、数千人の相撲に取り組んでいる競技人口の中からプロの力士として角界に進める者は約600名程。一人前となる関取以上は70人。『辛抱』に登場するような若者たちの挑戦には、並々ならぬ覚悟と努力が詰まっています。ぜひ、本ドキュメンタリー作品をご視聴下さい。
◇その他おすすめドキュメンタリーご紹介
相撲をテーマにした作品では、今回ご紹介した『辛抱』以外にも、インドの相撲道場に密着したドキュメンタリー映画『インド相撲』も公開されています。是非ご覧ください。
[サイトURL:https://asiandocs.co.jp/contents/412]
【コラム】おすすめ!必見作品『辛抱』
アジアンドキュメンタリーズの配信作品の中から、今、特に注目されている人気の話題作をピックアップしてご紹介させていただきます。
ドキュメンタリー作品ページはこちらからご視聴下さい。
『辛抱』 https://asiandocs.co.jp/contents/418
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