自衛隊の離島防衛と台湾有事に備える防衛政策の転換点をリアルに描くドキュメンタリー『日本の最前線』

 


今回のドキュメンタリー紹介は、日本の防衛戦略の「南西シフト」や自衛隊の南西諸島配備、離島防衛の実態に迫る『日本の最前線』です。台湾有事や尖閣諸島問題、中国の軍事的脅威など、現代の安全保障をめぐる緊張感がリアルに映し出されています。また石垣島や与那国島、宮古島といった自衛隊駐屯地の設置と、防衛力強化に伴う地域住民との関係にも注目。防衛政策の転換点を迎えており、賛否ある自衛隊の防衛力強化の全容を知ることができるドキュメンタリーです。それでは作品紹介をさせていただきます。
 

<作品紹介>

ドキュメンタリー作品タイトル:日本の最前線

~尖閣諸島問題、台湾有事に備える離島防衛・南西諸島の自衛隊。日本の防衛力強化の賛否と国防リアルを追う~

 
原題  The Japanese Frontline.
制作年/作品時間  2023年製作/作品時間30分
撮影地  日本
製作国  オーストラリア
取材  ジェームズ・オーテン
 
周辺国の海洋進出や軍事的脅威が増す中、防衛力の増強を始めた日本。激動する東アジア情勢の中で、南西諸島と領海を守るために、自衛隊内に水陸機動団を組織した。台湾有事を想定し、沖縄県石垣島に自衛隊駐屯地を建設。島に自衛隊がいなければ「攻めやすい場所」になるという市長に対し、戦争の記憶がある高齢者は反対の声を上げる。自国の国境を防衛するために基地を設けようとすると国民からは反対運動が起きるという、平和国家日本ならではのジレンマだ。活動家でもある市議は、漁民として尖閣諸島海域で漁を行う。彼が尖閣諸島に向かう時は海上保安庁の臨検を受け、洋上でも常に監視されている。自国の領土とは思えないほどの権力の介入に、市議は異を唱える。外国人ジャーナリストが興味を持った日本の国防の現実。世界は日本国民の判断の行方を見守っている。

[ドキュメンタリー作品・予告編]
 


<『日本の最前線』ドキュメンタリー概略>

本ドキュメンタリーでは、南西諸島防衛の中核を担う自衛隊の活動が記録されています。特に注目されるのは、北朝鮮によるミサイル発射などの軍事的脅威や中国の台湾侵攻を視野に入れた、先島諸島の防衛力強化であり、宮古島ミサイル配備や石垣島自衛隊駐屯地、与那国島防衛の実情です。こうした自衛隊配備の動きは、南西シフトと呼ばれる防衛戦略に基づいたもので、従来の本土中心の防衛から、離島防衛・島嶼防衛戦略へとシフトしている様子がうかがえます。防衛政策の変化は、防衛費の大幅な増加としても表れています。
また、地域住民の声にも丁寧に耳を傾けており、駐屯地開設によって、石垣島住民の声は「駐屯地ができれば狙われやすくなる」というものと「駐屯地がなければすぐに占領されてしまう」というものとに二分され、対立が生まれています。自衛隊基地問題が地域社会や暮らしにどのような影響を与えているのかも焦点の一つとなっています。戦争と平和のはざまで揺れる「日本の防衛最前線」の現実を生々しく伝えるドキュメンタリーとなっています。
本作品をより興味深く観ていただく前に、本作に関連する防衛力強化の背景と防衛費推移や台湾有事に関して、簡単に解説いたします。



<解説!防衛力強化の背景と防衛費推移>

■防衛費の概要と日本の防衛力強化の背景■

日本の防衛費は、長年にわたりGDPの約1%に抑えられてきましたが、近年では防衛力強化の必要性から増加傾向にあります。政府は2022年、防衛費を2027年度までにGDP比2%にまで引き上げる方針を打ち出し、大規模な軍備増強を進めています。
この背景には、中国の軍事的台頭や北朝鮮のミサイル開発、そして台湾有事といった地域的緊張の高まりがあり、日本が従来の専守防衛政策からより積極的な抑止力の強化へと転換しつつある状況がうかがえます。

■1990年代以降の日本の防衛費推移■

年度 1990年 2000年 2010年 2020年
防衛費 約3.2兆円 約4.9兆円 約4.8兆円 約5.3兆円

年度 2021年 2022年 2023年 2024年
防衛費 約5.3兆円 約5.4兆円 約6.8兆円 約7.9兆円

防衛費の推移を見てみると、2000年代初頭には約5兆円前後となり、2000年代はほぼ横ばいでした。その後、2010年代から増加に転じ、2023年度予算では6.8兆円、2024年度予算は過去最大の7.9兆円となり、今後さらに増額される見込みです。(参考:防衛省「防衛関係費の推移」)
2024年度の防衛費は、2022年度のGDPとの比較で約1.6%に相当し、目標達成に向けて増額が続いています。
こうした防衛費の増額は、ミサイル防衛システムや自衛隊の新装備導入、水陸機動団の強化、そして南西諸島の自衛隊駐屯地整備などに活用されています。日本の防衛費は近年増加傾向にあり、安全保障環境の変化や防衛力強化の必要性に対応するため、予算の拡充が図られています。
 


<解説!台湾有事に関して>

■台湾有事とは何か■

台湾有事とは、中国が台湾を武力で統一しようとする事態、または台湾を巡る米中の軍事衝突のことを指します。2020年代に入り、台湾周辺での中国軍の活動が活発化しており、台湾有事が現実味を帯びて語られるようになりました。中国政府は「一つの中国」政策を掲げ、台湾を国家として認めていません。これに対し、アメリカは台湾関係法に基づいて台湾の防衛を支援しており、もし中国が武力侵攻を行った場合、米中の直接対決に発展する可能性もあります。


■台湾有事による日本への影響■

台湾有事が発生した場合、日本への影響は計り知れません。まず、米軍が日本の基地を使用する可能性が高く、特に沖縄の在日米軍基地が重要な拠点となります。そのため、日本も戦争に巻き込まれるリスクが否定できません。また、台湾と日本の距離は約110km。南西諸島、特に与那国島や石垣島、宮古島は台湾有事の最前線になり得る地域であり、自衛隊の配備や装備強化が急がれています。このような現実は、自衛隊沖縄配備の強化、防衛力強化の加速、防衛費の拡充といった動きと密接に関係しています。
『日本の最前線』では、台湾有事が現実の危機として存在していることを前提に、自衛隊の備えがどのように進められているか、地域住民の受け止め方などを詳細に取材しています。



<『日本の最前線』ドキュメンタリー作品のみどころ>

『日本の最前線』は、激動する東アジア情勢の中で、国防の最前線に立つ自衛隊と日本の離島地域に焦点を当てたドキュメンタリー作品です。特に、自衛隊の南西諸島配備、自衛隊駐屯地の新設や再編、自衛隊基地問題といった現場の実態を丁寧に取材し、防衛力強化が地域に与える影響とその意義を多角的に描いています。
沖縄本島、宮古島、石垣島、与那国島などの国境の島々が注目される中、防衛政策の転換点を迎えた日本の防衛最前線の今を、貴重な映像と現地取材で克明に伝えています。尖閣諸島問題や台湾有事といった国際的な安全保障問題も背景として描かれており、防衛装備庁や水陸機動団といった防衛組織の役割、さらには防衛費の増加は、中国の軍事的脅威や有事に備えていることをリアルに実感できます。
 

■こんな方におすすめ■

この作品は、防衛や安全保障に関心のあるすべての方におすすめです。特に以下のような方には、ぜひご視聴いただきたい内容となっています。
・防衛力強化の方針や自衛隊や日本の防衛政策について理解を深めたい方
・台湾有事や中国軍事的脅威といった東アジアの地政学リスクに関心がある方
・与那国島、石垣島、宮古島など離島地域の防衛や住民との関係に興味がある方
・戦争ドキュメンタリー、国防や戦争に関する映画を多角的に考察したい方、学生や研究者の方

『日本の最前線』は、いま最も注目される日本の防衛問題を多面的に描いた作品です。島嶼防衛や離島防衛作戦がどのように現実化しているのかを知ることができます。戦争と平和のはざまで揺れる日本の立ち位置を見つめ直す機会として、ぜひ視聴をおすすめします。
 



◇その他おすすめドキュメンタリーご紹介

防衛や台湾有事の関連作品では、今回ご紹介した『日本の最前線』以外にも台湾の現状を伝えるドキュメンタリー作品『分断された台湾』も公開されています。こちらも是非ご覧ください。

【コラム】おすすめ!必見作品『日本の最前線』

アジアンドキュメンタリーズの配信作品の中から、今、特に注目されている人気の話題作をピックアップしてご紹介させていただきます。
 
ドキュメンタリー作品ページはこちらからご視聴下さい。

『日本の最前線』 https://asiandocs.co.jp/contents/417


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