特集「水と生命」(全5本)

◆有史以来の“水の循環”を脅かす気候変動
地球環境と気候変動は密接な関係にあり、最も大きな影響を受けるのが「水資源」といわれています。よく地球は“水の星”と例えられますが、人間にとって使いやすい淡水は、実は地球上に存在する水の量のうち0.01%。このわずかな量の水が、河川や湖沼、山林に雨となって降り、それが海に出て、蒸発して雲になり、再び雨になって降ってくる、といった形で循環しています。しかし水は、常に一定の循環をしているわけではなく、地域や時季によって偏りがあります。気候変動により雨季がずれたり、降水量が大きく変わってしまったりすると、その地域に住む人間の暮らしに大きな影響を及ぼします。
 
◆水資源の偏在や人口増加による水不足の懸念
水は地域により偏在する資源です。世界全体では人口に対する水の量はじゅうぶんに存在していますが、国によって水の流入量や水資源の分配に大きな差があることが問題です。必要な水が満足に得られない人々は、世界に約30億人いるといわれています。また、都市の人口増加や気候変動による干ばつの激甚化により、水不足が深刻化する恐れもあります。2030年には、水の需要量に対して水資源量が40%も不足すると予測されています。地下水の過剰揚水による地盤沈下や水質汚濁などの問題も顕在化しており、水資源を巡る利害の対立等も懸念されています。
 
◆“水の安全”が生命や生態系を守る
私たちの命と健康を守る上で欠かせないのが「安全な水」です。水質の汚染は健康被害のほか、生態系への影響も必至の重大な問題。持続的な発展のためには、安全な水環境が不可欠です。水質汚染の原因の一つが産業排水。日本ではかつて深刻な水質汚染が公害の原因となったこともあり、現在では有害物質を除去した排水のシステムが普及しています。しかし海外に目を向けると、産業排水による水質汚染はいまだに深刻な問題です。一方で生活排水については、日本の水質汚染の主な原因とされており、最終消費者の私たちの環境に対する姿勢が問われています。

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