特集「認知症と向き合う」(全4本)

◆誰もが罹りうる認知症について理解を深める
認知症は現代医療では根本治療が難しいとされ、進行や発症を抑え、患者をケアすることが対処法となっています。認知症を発症する割合は高齢になるほど上がるため、日本や欧州など、高齢化が進んだ国の認知症患者数が多い傾向にあります。OECDによると人口1000人あたりの認知症患者数はOECD平均が14.7人であるのに対し、日本は23.3人と最多。2037年には38.4人に増えると予測されています。誰もが罹りうる身近な病状でありながら、理解が進んでいるとは言いがたい認知症について、さまざまな角度から映像に収めた作品をご覧いただきます。
 
◆呼称の変更と、患者の意思を尊重したケア
認知症は、英語で“Dementia”。語源は「狂気、知性を失う」という意味のラテン語です。他の言語でも「愚か者」を意味する言葉が含まれています。日本でもかつて“痴呆”という差別的な呼称を使っていましたが、2004年に“認知症”と改めました。これにより社会の認識は大きく変化。「当事者抜きに当事者に関わることは決めない」の理念の下、認知症患者の意思を尊重することが重視されるようになりました。認知症患者は、ただ「支援を受ける存在」ではなく、「主体性を持った存在」なのです。
 
◆「当たり前」の日常を失う家族介護者
認知症を発症すると、日常的にさまざまな生活障害が起きます。本人はもちろん家族にも影響は必至です。介護や看護のために離職し、その後の再就職も難しいといったケースも多く見られます。介護する家族にとって、仕事を続けていくことや社会との関わり、趣味の継続など、人としての当たり前の生活を続けていくことが困難な状況が生まれています。一方で高齢化社会の進行により、独居や夫婦のみの高齢者世帯が増加。認知症患者にとって最も近い存在の家族の介護力が、次第に低下しているのも事実です。

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