特集「モンゴルの光と影」(全6本)

◆豊かな自然環境を脅かす気候変動
世界で2番目に大きい内陸国のモンゴル。日本の4倍近い国土に、約340万人が居住しています。大草原と遊牧民、豊かな自然環境で知られていますが、近年は牧畜から離れて都市部に移住する人が増えてきました。気候変動の影響で、夏の干ばつ、冬の雪害など自然災害が多発し、牧草地が減少。砂漠化や水資源の減少も報告されています。1990年の社会主義体制崩壊後に農地や鉱山の開発が進んだ一方で、自然破壊も起きていることが背景にあります。
 
◆弾圧を乗り越え、受け継がれるシャーマニズム
モンゴルには、固有のシャーマニズムが現存しています。社会主義国家の時代に信仰は弾圧を受けましたが、モンゴル北部で根強く支持されてきました。シャーマニズムは天地、自然、祖霊とのつながることで、未来を占うだけでなく、病気や人間関係の悩みなども解消する、土着の精霊信仰。遊牧民たちはシャーマンを介して、絶対的な自然の力を味方につけて生きてきたのです。市場経済が導入され経済バブルが起きると、社会の変化に戸惑う庶民が心のよりどころを求めるようになりました。自然の秩序や伝統を重視するシャーマニズムが、再び評価されています。
 
◆首都への人口集中がもたらす社会問題
首都のウランバートルは人口160万人。未登録者を含めると170万人とも言われ、モンゴル全人口の半分が首都に集中しています。ウランバートルでは、過密化に伴う交通渋滞や教育機関の不足の他、道路や橋などのインフラへの負荷増大などの問題が起きています。また、生活のために仕事を求めて流入してきた元遊牧民や元農民が、上下水や電気、暖房等のインフラが整っていない周辺地域にゲルを立てて居住区を形成。ゲル地域からは石炭燃料の煙や灰、生活排水、ゴミなどによる公害が問題化しています。

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