特集「ロヒンギャの行方」(全3本)
◆ミャンマー国軍から弾圧された、イスラム系少数民族
「世界で最も迫害された少数民族」と呼ばれるロヒンギャ難民はミャンマー西部のラカイン州に住む、推計人口100万人以上のイスラム少数民族です。2017年8月、ロヒンギャの武装勢力「アラカン・ロヒンギャ救世軍」(ARSA)が警察施設を襲撃したことをきっかけに、ミャンマー国軍はARSAの掃討作戦を開始。イスラム教徒の集落を焼き払い、乳幼児や女性、高齢者を含む住民を無差別に殺害したのです。70数万人ものロヒンギャが、国境を接するバングラデシュのコックスバザール県に逃れました。
◆難民キャンプの治安悪化が招く、支援の停滞
バングラデシュのコックスバザール県には、10カ所余りの難民キャンプがあり、国連の調べによると2023年7月現在96万人が暮らしています。このうち60万人が住むのが世界最大級の難民キャンプ、クトゥパロンです。現地では国連機関やバングラデシュ政府が協力して食糧供給や医療などの人道支援活動を行っていますが、一方で違法薬物や銃器の流通、殺人事件などが多発。治安の悪化も問題になっています。キャンプ周辺はフェンスや鉄条網で囲われ、武装警官が巡回するほど。難民の存在が「保護するもの」から「監視・警戒するもの」へと変化しています。
◆文化や伝統を守るために、教育の充実を
ロヒンギャ難民にとって、言語や文化の伝承は切実な問題です。ユニセフの調査によると。4歳から14歳のロヒンギャの子供たちで教育を受けているのは約23%。7割以上の子供たちがまったく教育を受けていないのです。また、非政府組織が提供する教育ではベンガル語の教科書が使われることが多く、第一言語のロヒンギャ語を学ぶ機会は限られています。文化や伝統を維持するためには、言語教育が欠かせません。教育は、人間にとって基本な権利の一つであり、経済発展、貧困からの脱却においても欠かせないものです。ロヒンギャの人々の平和や社会の安定のためにも、国際社会の教育支援が求められています。
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