
特集「インドと女性」(全4本)
◆女性の社会進出を妨げる伝統的価値観
男女格差を示す指標として、世界経済フォーラムが毎年発表している「ジェンダー・ギャップ指数」2024で、インドは146カ国中129位。女性の就学率は向上しているものの、中等教育以上になると農村部を中心に中途退学者が増え、識字率にも男女格差があります。女性教育の妨げになっているのは貧困や早婚。特に早婚は法律で禁止されているものの、インドは世界一児童婚が多い国で、児童婚撲滅に取り組む団体「ガールズ・ノット・ブライズ」は、インド女性の4分の1以上が18歳になる前に結婚していると批判しています。雇用においては既婚女性の地位が低く、結婚後は仕事を辞めて配偶者とその家族の世話をすることが求められます。
◆家庭内にもある、さまざまな制限や差別
結婚後は妻や母としての役割に専念することが求められがちなインドの女性ですが、その家庭における地位は決して高くありません。ここでも男尊女卑の伝統的な価値観や文化的背景に大きく影響されています。多くの家庭で多世代同居が一般的であり、女性は夫や子供だけでなく、義理の親の世話も担います。料理や子育て、家族の世話といった家事労働は女性の責任とされますが、家庭内での決定権者は一般的に男性です。また、家庭内での暴力や圧力といった問題を抱えていることも多く、女性が自分の意見や希望を自由に表現できない状況があります。
◆女性の志向に応える雇用を生み出せるか
2021年の世界銀行の報告書によると、インドの正規・非正規労働者に占める女性の割合は23%。家事や農業、子どもの教育といった無報酬労働がデータに反映されていないため過小評価と言われていますが、隣国のスリランカやバングラデシュよりも低く、社会進出への壁の存在を物語っています。大半の女性は農作業や工場労働、家事など低スキル労働に従事。ジェンダー平等の専門家は「労働市場は女性が望む仕事を生み出すことができておらず、女性のキャリア志向はあまりにも頻繁に否定されている」と指摘しています。人口14億人を超え、世界最大の国となったインド。女性の社会進出も、世界が注視しています。
お気に入り登録数:0