
特集「終活を考える」(全3本)
◆老いや死を意識したとき、人が取るべき行動とは
近年、急速に広がりを見せる「終活」。言葉としては意外に新しく、2009年に週刊誌の記事で使われたのが最初と言われています。この言葉の出現により、老いや死への備えが一般化。海外でも終活は高齢化社会に向けたビジネスとして、市場が拡大。世界の終活計画市場規模は2030年までに450億ドルを突破すると予測されています。経済発展とともに広がった格差社会、高齢化社会の進行により、未来の予測がしづらい時代になりました。歳を重ねるとともに、健康も財産も記憶も我が手から離れてゆく。老いや死を意識したとき、人が取るべき行動の最適解は何でしょうか。
◆社会構造や信仰心の変化がもたらした、死後の段取り
葬儀の準備や遺品整理を前もって行っておくことで、遺族の経済的負担や精神的負担を軽くすることができます。日本経済新聞が2023年に行った終活に関するアンケート調査では、60%以上の人が「家族への負担軽減」を終活の主な目的として挙げています。また、死後あるいは意思表示が困難になった場合の扱いについて自分の意思を明確にしておくことで、家族や周囲の人は医療や介護の選択、財産の分配などをスムーズに行えるようになります。かつては葬儀の多くが、町内会など地域社会の協力のもとで行われていましたが、今は葬儀会社が取り仕切ることがほとんどです。地域とのつながりも、宗教との関わりも希薄化する中で、葬儀や墓など死後の段取りが個人に求められるようになりました。
◆残された時間をどう生きるかも終活のテーマ
終活は、より良い死を迎えるための準備。自分が望む終末医療や看取りの方法などを前もって計画しておくことで、家族が戸惑うことがなくなります。心理学の研究によれば、終活を行うことで、死に対する恐怖心や不安が軽減されることが示されています。残りの人生を充実させるためにも終活は大きな意味を持つもの。死を意識することでこれまでの人生を振り返り、自分に残された時間を有意義に過ごすための目標や計画を立てることができるのです。終活は人生を豊かにするだけでなく、周囲の人々にも思いを伝えることができる人生最後の活動。心安らかな死を迎えるためには、避けて通れない道なのです。
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