特集「懐かしき黄金時代」(全4本)
◆記憶の器としての「物」が、失われた豊かさを召喚する
世界が今よりもずっとシンプルだった時代、社会情勢や文化を記録し、家族やコミュニティの絆を象徴するメディアは限られていました。19世紀半ばから20世紀初頭にかけては、活字と写真がその役割を担い、その後に普及したラジオは、単なる機械ではなく「家族の一員」として扱われるほどの存在でした。しかし時代の変遷や政変、紛争によって、これらのメディアが記録した平穏な日常や風景は物理的にも精神的にも損なわれ、現代人の記憶から消えつつあります。こうした中で、古い機械や道具などのスクラップという「物」への再評価が進んでいます。単なる廃棄物ではなく、失われた時代の文化的な記憶と歴史を体現する「記憶の器」としての価値を認められたのです。
◆再生のプロセスが紡ぐ癒やしは、孤独を溶かす共感の連帯
古い物を再生させる試みは、物の機能や外形を回復させるだけでなく、人々の孤独や悲しみを癒やす物語としての側面も持っています。映画館を復活させたり、廃棄寸前の電気製品を修理したりする行為は、喪失感や憂鬱を抱える人々にとって人生の尊厳を取り戻すプロセスにもなりえます。「再生」の過程では、若者への技術の継承や、SNSとの融合など、新たな対話も生まれています。過去の技術は現代においても人々の見方を変え、自己の発見やコミュニティの再建を促す力を持っているのです。集団で魔法のような体験を共有することは、分断や孤立が進みバラバラになった人々の心を、再び結びつける力を持っています。
◆ノスタルジーを超え、持続可能な未来への道標に
「失われた美しいあの頃」を振り返る活動は、単なる過去への逃避ではなく、持続可能な社会を築くための指針にもなります。近年注目されているのが、廃棄された物を他の用途や芸術作品などに転用する「アップサイクル」。物に刻まれた歴史や傷跡を「美しさ」として再評価し、資源の有効活用と環境負荷の低減を両立させる創造的なアプローチです。荒廃した紛争地では、古い写真がかつての豊かで多様な自国の姿を教え、若い世代に驚きを与えています。物がその寿命を終えて地に還るのを待つだけでなく、新しい役目を与えて生かし続けることは、使い捨ての文化に対する重要な提言。持続可能な未来への、一つの答えでもあります。
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