特集「イランを巡る」(全3本)

◆他民族のイスラム教国は独特の政治体制
一般に、「親日国」あるいは「反米」とレッテルを貼られることが多いイランは、実態は謎に包まれた国。歴史は古代文明時代から続いていますが、現在の国家体制は1979年のイラン革命で成立したイラン・イスラム共和国が出発点。政治制度は極めて宗教色が強く、イスラム教の最高指導者が大統領の上に立ちます。少数ですが、キリスト教やゾロアスター教、ユダヤ教などの信者も居住。陸続きに6カ国と国境を接しているため、隣国の影響を受けた独自の文化が育っている地域も多くあります。
 
◆全てに優先するイスラム思想
イランでは、すべての自由は「イスラムの原則に反しない限り」でしか認められません。そのために国際的な非難を浴びているのが、人権問題です。法の恣意的運用による逮捕・監禁・投獄や、公正さを欠く裁判での死刑執行、ジャーナリストへの迫害、マイノリティの権利制限など枚挙にいとまがありません。これほどの圧政が続く中でも、信仰心を失わず、つつましく暮らす市井の人たちの姿があります。神に感謝し、今日一日を大切に生きる。その純粋な思いに、心動かされます。
 
◆女性の高学歴化が進む
イランではイスラム教の教義に基づき、「男女隔離政策」を徹底した上で、女子教育に力を入れてきました。「男性の目に触れるのではないか」という親の懸念を払拭したことで、保守的な農村地域にも女子教育が浸透したと言われています。また、女性の高学歴化が進み、教育や医療などの分野を中心に女性の活躍が見られます。企業の管理職や国会議員にも女性の姿がありますが、前述の通りこれらは全て「イスラムの原則に反しない限り」において容認されているものなのです。
 
◆森林地帯と砂漠で環境に大きな差
イランは砂漠のイメージが強いのですが、実は山岳国。カスピ海沿岸からイラン西部にかけての森林地帯は農業が盛んです。国内で生産される米と茶は、ほとんどこの地域で栽培されています。内陸部には四季があり、夏の最高気温は40度前後と高いものの、湿度が低いため日陰は涼しく感じられます。春から初秋にかけてはほとんど雨が降らないため、晩秋から初春にかけての降水量がその夏のイラン人の生活を左右します。東部に広がる2つの大砂漠では、夏の最高気温が50度を超えることも。水は貴重な資源なのです。

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