特集「戦う医師たち」(全3本)

◆医療崩壊と闘う
世界中で新型コロナウイルスの感染が拡大し、各国の医療崩壊が報じられている中で、医師や看護師などの医療従事者は懸命に闘っています。また、紛争や内戦による医療施設の破壊や、貧困による医療物資の欠乏、未発達なインフラによる治療機会の不足など、さまざまな要因で医療が崩壊の危機に直面しています。特集「闘う医師たち」では、医療事情が異なる3つの地域で奮闘するドクターにスポットを当てました。
 
◆医療格差と闘う
医療の受けやすさは、近年アジア地域でも改善されてきました。しかし農村部では地理的要因と経済的要因から、依然として医療を受けるのが難しい状況にあります。2018年のOECD報告書によると、カンボジア、ネパール、フィリピンで、低所得世帯の女性の4人に3人以上が経済的理由で医療を受けることが難しい状態にあります。また、ネパール、パキスタンでは、極貧世帯の女性の約3人に2人が地理的要因で十分な医療を受けられていません。医療資源が限られた農村地域の中では、献身的に治療にあたる医師たちの姿があります。
 
◆紛争・内戦と闘う
2016年に、暴力的紛争が発生した国の数が約30年ぶりに増加しました。紛争の細分化も進んでおり、例えばシリア内戦に関与する武装勢力の数は、紛争発生時はわずか8つだったものが数千の集団にまで膨れ上がっています。紛争下で最も必要とされるのが医師です。病院を標的とする攻撃が絶えない中、彼らは危険をかえりみず負傷者の治療にあたっているのです。そこには「命を守る」という医師としての責務と、故郷や祖国に対する深い愛が感じられます。
 
◆患者と家族の未来を照らす
経済発展を遂げた国では、社会の成熟とともに死生観が変化し、延命治療についてもその意義を問われ始めています。アジアでは台湾と韓国で、看取りや緩和ケアなど尊厳死に関わる法制化がされています。生きることの意味に直面する患者や家族の葛藤に寄り添い、患者にとって何が最善の選択なのかを模索することが、現代の医師に課せられた使命の一つであるといえます。

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