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誰もいない部屋-生者と死者のはざまで-

【日本初公開作品】
原題:EMPTY ROOM
2017年製作/イスラエル/作品時間52分
 
夫婦の息子が軍事事故で亡くなったのは4年前のことでした。息子の死を聞かされてから30分後、母親のイリットは25歳の息子の精子を遺体から抽出するように頼んだのです。彼女は、「それは母親の本能でした」と回想します。夫婦は、寄付された卵子と息子の精子を受精させ、代理母の助けを借りて、亡くなった息子の精子から子どもを作り、その子を孫として育ようと考えたのです。それは、イスラエルではもちろん、世界でも前例のない事でした。国からの承認を得るために、夫婦は息子を失った悲しみの中で法廷での闘争に打って出たのです。
 
監督:シャーリー・バーコビッツ
 
◆科学の発展と新しい生命の創造の境界線はどこにあるのか◆
イスラエルでは、戦場へ赴く兵士は自らの精子を凍結保存する男性が少なくないといいます。「血筋を絶やしたくない」と、彼らは言います。自分の遺伝子を次の世代に伝えていく権利があるという強い信念を持っているのです。それは、ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)の悲劇を経て、イスラエル建国に至ったことと無関係ではありません。イスラエルでは、民族の血筋を絶やさないことが重い意味を持っているのです。そのためなら、たとえ人工的な手段を使ってでも許されるという意識が、少なからず国民のなかにあるのです。一方、臓器提供と同じ扱いをする国や、死者が生前に同意していた場合でも倫理的な懸念のため、遺体からの精子採取を禁じている国もあります。科学の発展と新しい生命の創造の境界は、私たちの社会において、必ずしも明確ではないのです。

[予告編]
 
(映画賞/映画祭)
* Krakow Film Festival (Poland)
* Haifa Film Festival

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