特集「タイを巡る」(全8本)

10本のドキュメンタリー映画で、タイを巡る旅をしてみましょう。

◆仏教だけではないタイの宗教
タイのどの作品にもよく出てくる人物は「僧侶」です。タイは仏教徒が多い国だと言われています。しかし、ドキュメンタリーをよく見ると、タイ人がお祈りしているのは仏教に関連するものだけではありません。タイの仏教とあわせて多くの仏教徒がよく信仰ているのは、ヒンドゥー教とピー信仰です。「ピー」とは、タイ語において「お化け、精霊、妖怪」のことです。仏教とヒンドゥー教が普及する前から、ピー信仰はタイに根づいていました。『ダック・アカデミー』に出てきた穀物神、『メコン川の命脈』に出てきた乗り物の神、それぞれはピー信仰とヒンドゥー教に影響を与える神様です。もう少し思い出しやすい例をあげれば、タイのお店に行くときに見たことがあるかもしてませんが、レジの近くによく置いてある招き猫のように見かける女性の神様は、ピー信仰の神様です。バンコクで人気なデパート「セントラルワールド」の前にあるトリムルティの祠はヒンドゥー教のものです。タイ人がヒンドゥー教とピー信仰を信仰する理由は、お祈りしたらいいことが起きると思っているからです。これからタイ旅行をするとき、もしくは日本にあるタイのお店に行くとき、タイ人の信仰をチェックしましょう!
 
◆家族を大事にするタイ人
タイ人は、親孝行や家族を大事にする考えを小さい頃から教えられ、習慣にさせられます。タイと日本では、親孝行にも違う点があるかもしれません。タイ人は生まれてくることは親の恩恵だと教えられます。そして、大きくなると親の面倒を見なければなりません。このような考えは、『遠い愛を求めて タイの花嫁たち』、『母との別れー残酷で最大の愛ー』、と『初めてあなたを見た日から』でもよく見られます。タイの花嫁たちが外国人と結婚する理由は「生活のため」だと言っています。しかし、自分の生活のためだけではなくて、子ども、そして親も含めています。介護ホームで働いているタイ女性は、世話をしている入居者が自分の家族のような人だと思い、大事にしています。タイの隣にあるミャンマーでも親に対しては同じ考えを持っています。それは、『いつか故郷へ ーカレン族の闘争ー』で見られます。主人公が親の希望を色々とかなえようとしています。
 
◆貧しい人が生きづらいタイ
タイ人の生活、文化、生き方を知るためにドキュメンタリー映画を視聴される方がいらっしゃると思いますが、さらにタイ社会にある問題も発見してもらいたいと思います。特に日本と違う点です。例えば、『浮家の子どもたち』に出てくる制服について。家が貧しい生徒たちは生活に困窮しているのに、制服を持ってないとペナルティが科されます。タイの国立学校は幼児園から決まった制服があるのです。これは貧しい家庭でしばしば問題になっています。『遠い愛を求めて タイの花嫁たち』に登場する女性たちは貧困のため、パタヤに行って売春をしました。家族は元気な大人だけなら、村にある仕事をすれば何とか食べていけるかもしれません。ただ、幼い子どもや病気のお年寄り、もしくは障碍者などがいれば、たちまち生活は苦しくなります。なぜならタイ政府からもらえる支援は、1か月あたり約3200円~5000円で生活するには足りません。タイの経済的不平等は『Y/Our Music』にも見られます。 「イサーン出身者は昔は敬遠された。イサーンの人間は汚くて―」という話があります。昔からイーサンは貧しい地域だと言われています。そして、生活のためにイーサンから家を出て、バンコクや大きい都市で働いている人がたくさんいます。現在のバンコクの様子とアジアンドキュメンタリーズで配信中している作品のタイの地方の様子を比べたら、その大きな格差をすぐに感じることができるでしょう。

お気に入り登録数:0

カテゴリ