特集「性の多様性について考える」(全6本)
◆まだまだ伝えきれていない現実社会の「リアル」
6月は、LGBTQ+への理解を深め、性自認や性的指向を理由にした差別や偏見のない社会づくりを推進する「プライド月間」です。1969年6月にニューヨークの酒場で、不法な捜査に抵抗したLGBTQ+たちが起こした暴動「ストーンウォールの反乱」が、LGBTQ+解放運動の端緒となりました。人権意識の高まりに比例して、さまざまな属性の人たちが、安心して自分らしく暮らしていける社会を築こうという機運が世界各国で高まっています。今では、同性同士の恋愛を扱ったドラマやコミックも流行し、そこからLGBTQ+への理解や共感が広がる一方、まだまだ伝え切れていない現実社会の「リアル」が存在するのも事実です。ドキュメンタリー映画だからこそ、理解を深められるものもあるのではないでしょうか。
◆迫害の歴史から、認め合う時代へ
近代以降の国際社会において法やモラルの中心となったのが、欧米のキリスト教的価値観でした。キリスト教では「父、母、子」が正しい家族の姿であるとされ、同性婚や同性愛を嫌悪、迫害してきました。また、イスラム教の教義においても同性愛は禁忌とされ、死罪を含む厳罰に処される行為とされてきました。儒教の影響で伝統的な家族観を重んじる中国・朝鮮でも、社会はLGBTQ+に対して抑圧的でした。日本もキリスト教規範の影響を受けた近代以降、社会的抑圧が強まっていきます。ありのままの自分でいることが許されない社会、身の危険につながる時代が長く続いてきたのです。そして迫害の歴史から、認め合う時代へ。今、一筋の光明がようやく見えてきたと言えるのかもしれません。
◆相互に理解を深めることが共生の第一歩
人権は、生まれながらにして誰もが持っている権利です。性別や国籍、思想信条、職業などに関わらず、全ての人に自分らしく生きる権利があります。これまで弱者、マイノリティと呼ばれていた属性の人たちにも、当然認められる権利です。同時に、他者の権利を侵害することがあってはなりません。「プライド月間」を単なるトレンドで終わらせることなく、自然に違いを認め尊重する社会へとつなげていくことが大切です。私たちは、もっと自由であるべきではないでしょうか。
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