特集「混迷する中東」(全7本)

◆終わりのない紛争による甚大な人道危機
中東地域の多くの国々では、長引く紛争が市民に耐え難い苦痛を強いています。ガザ地区では、イスラエルによる空爆と侵攻により大部分が廃墟と化し、5万人以上のパレスチナ人が犠牲となりました。シリアではアサド政権による強権政治が半世紀以上続き、反政府デモに対する武力鎮圧や、20万人以上の民間人の逮捕・収容施設での拷問といった戦争犯罪が報告されています。また、イラクでは過激派組織IS(イスラム国)との戦いの後も、避難民キャンプで暮らす子どもたちが凄惨な処刑を目撃したトラウマに苦しんでおり、地域全体で人権の侵害と世代を超えた心の傷が深刻な問題となっています。
 
◆国家の変容と武装勢力の台頭
伝統的な国家の枠組みが揺らぎ、非国家主体や過激派組織が実質的な支配権を握るケースが増えています。アフガニスタンでは、2021年の米軍撤退後にタリバンが再起。米軍が残した71億ドル相当の最新兵器を手に入れて、武装集団から強力な軍事政権へと変貌を遂げました。レバノンでは、イランの支援を受ける武装組織のヒズボラが、正規軍を上回る軍事力を保持し、病院建設や社会福祉を提供することで「国家の中の国家」として機能しています。これらの勢力は、国境を越えた影響力を行使し、地域全体の安全保障を不安定にさせる要因となっています。
 
◆経済改革を阻む地域の不安定化
石油依存からの脱却を目指す経済改革も、相次ぐ紛争によって危機に瀕しています。サウジアラビアはムハンマド・ビン・サルマン王太子の下、観光やテクノロジーを中心とした国家への転換を目指す「ビジョン2030」を推進していますが、この計画は地域の安定に強く依存しています。しかし、米国・イスラエルとイランの対立激化により、サウジ国内の石油施設や輸送路が攻撃対象となり、経済が一時的に混乱しました。地域の不安定化は、計画の鍵となる外国投資の誘致を困難にし、巨大プロジェクトの支出見直しや優先順位の変更を余儀なくさせるなど、近代化への歩みを足止めしています。

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